Gizanyのサムです。
今回は、鍛造・切削加工を生かした非売品のプラチナのリングをご紹介します。
ジュエリー加工は、古来より手作りでした。複数個を制作する為に、戦後、鋳造で製作する取り組みが始まりました。私が業界でお世話になり始めた50年前、既に広くこの加工方法が取り入れられていた様です。
私が鍛造を生かしてマリッジリングを生産する事を国内で学んだのは、約35年前。それはユニークな発想でした。当時、市川市に工場を持った目黒社長が、工場内を案内してくれ、その工程を見せてくれました。その方法が、日本のマリッジリングの生産方式の基本になったと思います。
さて、私が改めて鍛造・切削でマリッジリングを作る世界に触れたのは、20年余り前。アメリカのヴァージニア州にあるノルド社を訪れた時です。日本とは違う独自の製法でした。約2メーターにも及ぶシームレスパイプを鍛造で製作して、それを指輪の幅に合わせて輪切りにする。それを切削機に掛けて指輪を作っていました。
その、ノルドにお願いして製作したリングが、写真のサンプルです。あくまでも非売品として、鋳造ではできない、鍛造の可能性を形にしてもらいました。表面が波打つ事もなく、完全に鏡面仕上げになています。素材はプラチナです。18Kと比べると、プラチナを鏡面に仕上げるのは難易度が高い加工に成ります。
広い面を鏡面で仕上げる難しさの一つは、粘りのあるプラチナの特性にもあります。また、鋳造の欠点は、「ス」の問題です。昨今の鋳造技術は、精度の高い鋳造機の進化に寄ろところがありますが、熔解した金属を流し込む為、「ス」の発生は付いて回る課題です。その点、鍛造品には「ス」が発生しません。それだけに磨き上げた時に、奇麗な面を心配なく仕上げる事が出来ます。
この写真は、指輪のトップを見て頂くモノです。正にナイフの刃先の様になっています。乱れのないシャープな刃先をプラチナで加工ができるのは、正に鍛造・切削だからです。
この指輪は、販売はしません。指に付けたらシャープな刃先でケガをします。Pt950を素材にして、鍛造・切削の可能性を見て頂くために、こんな試みをしてみました。
Pt950 サイズは14番、13.47g
付録:この指輪は、アメリカの業界雑誌の表紙にもなりました。